とまどいの時間 不信

山寺の本堂下に　ワンコが２匹
一匹は　鼻筋と脚に深い傷跡

近づくと　どんどん奥に引っ込んでしまう
おどおどした目
行ったり来たり　落ち着かない

もう一方も
しっぽを　振りそうで　振れない
どういたらいいか　迷っているのか
片方に遠慮しているのか

やさしいいい顔

　やさしそうだなあ　ほんとにやさしいのかな
　なでてもらいたいなあ　なでてくれるかな
　信じたいなあ　ほんとに信じていいのかな

　いきなり　ぶたれたりしないかな
　突然　水かけられたりしないかな


信じたいけど　信じられない
もどかしい時間が　流れる


傷の無いコが　あるコをかばうように坐り
ふたりで毛布に　落ちついた
ふたりなら　安心



どんなことがあったか　わからないけれど
不信は　簡単にはぬぐえない
痛ましい傷跡は　心に巣食う


抱きしめたいのに　心は先に抱きしめられない

もどかしい時間